20130614

沖縄の地域資源を活用した新商品を作っていくためにはどうしたら良いか。(沖縄地域における新商品開発の成功の秘訣)

タイトルのとおり、沖縄の資源を活かした商品をどう開発していけばよいか、地元企業はもちろん、これから沖縄でビジネスを展開していく方々にとっても気になるテーマだと思います。
そこで、沖縄総合事務局が発行している「平成19年度産業技術動向調査 沖縄地域資源活用型新商品創出調査 報告書」を読み込むなかで、どのような考え方が重要か、要点を抜粋し、まとめました。



はじめに

これまで価格・性能・品質が商品の評価軸でした。今後は、これらの評価軸に加えて消費者 の感性に働きかけ共感・感動を得ることで商品やサービスの価値を高める「感性価値」を新た な「価値」として織り込まれた商品が、選ばれる時代になってきている。

「新たな技術開発ではなく、既存商品をリニューアルし、 新たな価値を付加する」、などの様々な方法がある。

1:調査の目的
沖縄地域は、固有の自然環境や地理的条件により、多種・多様な農林水産物や鉱物などの一 次産品、その加工製造工程から排出される副産物、さらに伝統工芸技術など、産業利用可能な地 域特有の資源が豊富にある。しかし、これらの地域資源を活用した商品開発の取り組みは様々な 分野で行われているものの、その多くは事業化に至っていない状況である。
本調査は、沖縄地域の中小企業による地域資源の「強み」をいかした商品(サービスを含む)開 発支援を行うことにより地域資源を活用した高付加価値な商品開発を促進することを目的とするも のである。

新商 品開発にあたっての留意点や検討事項をまとめたチェックリスト、新商品の価値創造の手法と先進 事例の紹介、商品開発にかかわる様々な支援機関など情報源を整理している。「新商品マネジメントガイド」を作成。

地域資源の定義

(1)地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物 または鉱工業品、(2)特産物となる鉱工業品の生産にかかわる技術、(3)地域の観光資源として 相当程度認識されているもの-の 3 点。






沖縄の産業資源を活用した事業を促進する意義があると考えられる資源として、農林水産物40品目、鉱工業品及び 鉱工業品の製造技術32品目、観光資源172品目の合計244品目が指定

農林水産物
さとうきび、沖縄島野菜、水稲、もちきび、甘しょ、シークワーサー、タンカン、マンゴー、パインアップル、パパイヤ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ(ピタヤ)、アセローラ(アセロラ)、バナナ、島とうがらし、 ヒハツモドキ、ハイビスカス、ソテツ、茶、豚、和牛、ヤギ、乳牛、リュウキュウマツ、タイワンハンノキ、ヤエヤマアオキ、マングローブ、薬用作物、ハブ、サンゴ、モズク、海ぶどう、アーサ、マグロ、ソデイカ、クルマエビ、カーブチー、ビーグ(い草)、ユーカリ、トコブシ

鉱工業品及び鉱工業品の製造技術
琉球泡盛、琉球びんがた、琉球漆器、喜如嘉の芭蕉布、読谷山花織、読谷山ミンサー、久米島紬(くめじまつむぎ)、宮古上布、八重山上布、八重山ミンサー、与那国織、首里織、琉球餅、八重山上布、南風原花織、知花花織、豊見城ウージ染、琉球焼、琉球ガラス、琉球楽器、沖縄黒糖、沖縄の塩、沖繩の豆腐(島どうふ、ゆしどうふ)、琉球料理、海洋深層水、クチャ(泥岩)、赤土、赤瓦、シーサー、かりゆしウェア、黒真珠

観光資源
やんばるの森、沖縄のビーチ、沖縄海岸国定公園、沖縄戦跡国定公園、西表石垣国立公園、渡名喜県立自然公園、久米島県立自然公園、伊良部県立自然公園、琉球王国のグスク及び関連遺産群、グスク、御嶽(拝所)、カー・ガー(取水所)、幸地腹・赤比儀腹両門中墓(こうちばら・あかひぎばらりょうもんむんちゅうばか)、伊江御殿墓、摩文 仁家の墓、大城按司の墓、伊祖の高御墓、唐人墓、豊見親墓、多良間島の土原豊見親のミャー カ、浦添ようどれ、佐敷ようどれ、伊是名玉御殿、石畳道、石垣氏庭園、伊江殿内庭園、福州園、 蔵元(琉球王府時代の行政府)及び番所跡、リン鉱石貯蔵庫跡、円覚寺跡、崇元寺跡、末吉宮 跡、猪垣、石彫獅子、川平湾及び於茂登岳、万座毛、久部良バリー帯、サンニヌ台、ティンダバ ナ、星野洞、洞寺鍾乳洞、伊原間鍾乳洞・サビチ洞、石垣島鍾乳洞、ニャティヤ洞、玉泉洞、普天間宮洞穴、金武観音寺鍾乳洞、ノグチゲラ生息地・飼育地、イリオモテヤマネコ生息地・飼育地、 ジュゴン生息地・飼育地、竹富島重要伝統的建造物群、フクギ並木、沖縄の空手・古武術、沖縄音 楽、組踊、エイサーなど


沖縄地域での新商品開発のポイント

多くの商品はパッケージ等のデザインや商 品のコンセプトおよび機能等を含め、商品としての独自性が低く競合する製品に対しての優位性を十分に保つことができていない。付加する「価値」およびその創造を強化する必要がある。

ターゲットや商品の差別化といったマーケティング戦略 の不十分さが指摘されている。現場目線の実践的なノウハウを共有して事業化率を高める必要がある。


商品開発を成功させるポイント

事業化の実現には、研究終了後の継続的な努力が必要である。
事業としての成功には、マーケットインの発想を取り入れた商品開発が必要である。
事業の成功を目指すには、経営者の主体的な参画が不可欠である。
自社の現状や今後の計画にみあった現実的な成功目標を立てることが肝要である。
成功目標をどこに設定するかをメンバー全員で十分議論すべきである。

成功のための商品開発プロセスのイメージ



沖縄地域における新商品開発の成功の秘訣

誰が使う商品なのかを明確にした商品企画を行なう。
作ることを目標とするのではなく、それを誰に売るのかを考えておくことが必要である。企画段階 で、ターゲットを􏰁確にしておかなくては意味がない。誰が、どのような状況で、何のために、どうや って使用する商品なのかを􏰁確に設定し、それにあわせた商品設計を行なうべきである。

連携等をはじめとした外部資源を有効に活用する。
原料の確保から販売までを全て自社で行なうのではなく、効果的な連携による事業化を目指す のが、成功への近道である。特に企業規模が小さい場合、多くの局面において外部資源を有効に 活用することに注力することが一つの効果的な手段と考えることができる。

販売担当者の意見を商品開発に反映させる。
消費者のニーズを商品に取り入れるために、販売現場の担当者の意見を企画段階からとりいれ るという方法が有効である。視覚的な価値を付加することを目的としたデザイナーとのコラボレーションは有効な手段として用いられるが、デザーナーも生産者であることには変わりない。作り手側の 論理の域を脱しないことも多いため、デザイナーが市場ニーズを把握できているかどうか注意深く 評価する必要がある。同時に、より消費者に近い、販売担当者の意見に耳を傾けるのは有効な手法である。

販路開拓が苦手なら、販路を持つ企業とのコラボレーションによる商品開発を行なう。
特に販路開拓を課題とする企業が多いことから考えても、直販に固執することなく、既に販路を 持つ企業とのコラボレーションによる商品開発など、有効な手法を模索する必要がある。販路の開 拓や市場での優位性を確保することは、メーカーにとっては不得手な分野であることが多い。自社 のオリジナルブランドを製造・販売することだけにとらわれず、すでに販路を持ち、一定の市場を確保している企業と、商品企画や開発の段階から連携することで、パートナー企業の既存顧客に対して的確な商品開発をすることが可能となる。

自社の強みや経営資源を冷静に判断し、自社で行なう範囲を明確にする。
まずは、自社の得意分野を利益に変える方法を一つの目標と考え、消費者向けの最終製品(消 費財)の製造に固執することなく、OEM 供給や、業務用の中間製品販売、一次加工段階で生産財 として最終製品メーカーへ販売するなど、あらゆるパターンの可能性を考慮し、自社で行なう範囲を明確にしていくのが肝要である。

商品の価値を消費者に伝えるしくみをつくる必要がある。
消費者と直接対応する販売担当者が、商品のコンセプトや背景、特徴などを深く理解する必要がある。商品に関する説明書、カタログ、パンフレットなどを整備するなど、消費者に商品価値を伝 えることができるしくみを確立することが大切である。


感性価値とは

商品やサービスには、機能性や信頼性、価格など価値基準がある。それは、商品やサービス を選択する際の大切な基準であるが、このような「従来の価値」は、作り手側から発信される一方 的な価値概念でしかない。「従来の価値」に対して、「感性価値」は、使い手(消費者)の感性に働きかけ、顕在化されることで、新たな価値「+αの価値」として付加する価値である。
グローバル化に伴って世界が均一化する中で、独自のアイデンティティがなければ、数ある商品群の中に埋没してしまう。今後の商品・サービスの開発には、使い手の感性に働きかけ、感動や共感を得ることによって顕在化するような「感性価値の創造」が重要になる。
消費者の感性は多様で、それ自身を定義することは困難であるが、感性価値を実現できれば、 高機能、信頼性、低価格といった要素を超えた「+αの価値」を提供することになり、それに見合 う対価を得ると同時に、モノやサービスに対する消費者の愛着や固定的な購買層を獲得するこ とができる。

感性価値創造とは

商品やサービスが『売れる』ためには、消費者の『買う』という行動が必要であり、消費 者の『買う』という行動は、何らかの価値により消費者の感性が刺激され、「必要」あるいは「欲しい」 という想いが喚起された結果である場合が多い。そのため、『売れる』商品やサービスとなるために は、感性価値創造を意識することが重要である。

感性価値創造のしくみ

感性価値創造には二つの方法がある。一つ目は、視覚(デザイン)や嗅覚(香り)など五感で感 じられるような価値を「+αの価値」として追加する方法で「感性価値付加型」と定義する。二つ目 は、商品やサービスが本来持っている潜在的な価値(作り手の思いや商品の背景にあるストーリーなど)を伝えることで、消費者の感性に触れ、「+αの価値」として認識してもらう方法で「感性価値顕在化型」と定義する。


つづく。


報告書を読み込んでいくと非常に面白い内容です。
後編は、さらに踏み込んだ内容について記述されているところをまとめます。